2年前の準備のときの話です。
若い衆の間で「よその町がやってるような、会所前の高張提灯をうちの町でも欲しいよね」という声が上がったことがあります。
で、その話題を町の長老にしたら、ひとこと
「あの墨書看板があるんだからそんなもの必要ないだろ」
と、ばっさり。

「でも、あの看板、夜は暗くって」と食い下がる若い衆に、
「お前らなあ、高張提灯がどういうものか分かってるのか?
へぼな提灯屋のぶしょったい提灯ならともかく、きちんとした高張を買ったらどれだけするか、知ってて言ってるのか?
それに高張ってのは、芝居小屋にしても、親分衆の家の玄関にしても、二張りで一組のものだ。
どこの町の会所を見て言い出したか知らんが、一張りだけで高張を出したつもりになるじゃないぞ。」
それきりで高張りの話題は消えてしまいました。
頑固というのは、時として伝統に根ざした教養でもあるんだなぁと感じたものです。